初めての葬儀は戸惑いがいっぱい

心臓を悪くし、十年以上に渡る闘病生活を送っていた父が、先日この世を去りました。
医師から告知されていたよりずっと伸びた人生の最後は、眠るような静かなものでした。

しかしその後の葬儀の段取りは、静かにとはいきませんでした。
なぜならば生前から耳にタコができるくらい聞かされていた父の希望が、音楽葬で見送って欲しいというものだったからです。

存命していたころは縁起でもないと言いつつ、冗談のように受け取っていたそれがいきなり現実のものとなったことで、私たち家族は父を失った悲しみに浸る余裕もなく、困惑の中に放り出されることになりました。
執り行った経験などもちろんなければ、参列したこともない音楽葬はまさしく未知の領域でした。

祖母や祖父や曾祖父の葬儀で、長年付き合いのある葬儀屋さんも、音楽葬は初めてだとのこと。
頼みの綱であった専門家までもが未経験であったことで、葬儀の準備は一層混迷を極めていきます。

しかし父の思い入れの強さを知っていた私たちには、妥協するという選択肢もなく、手探りでも準備を進めていく他ありませんでした。
とりあえず一般的な音楽葬の定義をネットから調べ、楽団はさすがに呼びづらいということで、一番に音楽はCDで流すことを決めました。
曲のチョイスは美空ひばりや石原裕次郎など、古き良き時代の歌手が歌った昭和の歌謡曲に送られたいという父の希望があったので、迷わずに選べたことが幸いでした。

音楽を流してもいいと言ってくれたホールを場に決め、参列者の方々には、事前に父の希望で音楽葬とする旨を伝えておきます。それでも当日誰もが居心地の悪そうな顔をする中、葬儀は行われました。

しかし今落ち着いてから考えてみると、家族一同皆何となく元気な和やかな気分で、その日を迎えることができたような気がします。
面白いことが好きだった父の、音楽葬は最後のサプライズだったのかもしれません。